まつもとの雑記

理系のオタクが一般ピープルには理解されない"ディープな"趣味について書き綴ります

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飼育下だと体色が変わる「アユモドキ」

アユモドキという魚を知っていますか?

ドジョウの仲間で、日本には京都府亀岡市桂川水系と岡山県旭川吉井川水系のみに生息している(残っている)希少種です。

なぜアユモドキが希少なのかというと説明が長くなります。

アユモドキに近い種(Botia属、Leptbotia属)がインドシナ半島に生息しており、アユモドキのルーツは東南アジアだとされていますが、アユモドキが2倍体に対して東南アジアに生息するBotia属は4倍体なのです。高校の理科や農業系の学校なら勉強していると思いますが、核型は一般的に2倍体から4倍体…と進化しますので、アユモドキの先祖が東南アジアから来たとは考えることができません。最近の研究では、東南アジアのBotia属よりもアユモドキの方が原始的な種であることも知られています。

store.shopping.yahoo.co.jp

日本には原始的なアユモドキがいるのに対し、中国大陸から生物の「橋渡し」的な役割だった朝鮮半島にはアユモドキの仲間は生息していませんし、中国や台湾にも生息していません。なぜかと言われると簡単に答えを出せませんが、生物の分布の中心では他の新しい生物が出現するので、新しく出現した種に古い種(ここではアユモドキ)が分布の中心から生息地の隅の方に追いやられたという考えがあります。

つまり、元は中国大陸の温帯モンスーン地域中心にアユモドキが生息していて、日本が中国大陸と陸続きだった日本にアユモドキがやってきます。その後、海進期で中国大陸と日本列島の間は海で分け隔てられます。さらにその後、中国大陸の個体は絶滅してしまい、日本列島の個体はまるで取り残されたかのような形で現在の分布になったということ。

似たような話に、沖縄に生息しているハブがあり、ハブも元は中国大陸が発祥(※らしい)で現在は日本にしか生息していません。

つまり、アユモドキを研究することは日本産淡水魚の起源と分散経路を探求する手がかりになるので、学術(動物地理学)的にきわめて重要な種なのです。

昔は琵琶湖・淀川水系(鴨川など)でも見られたようですが、今では上で挙げた桂川水系と旭川吉井川水系のみでしか見ることができない…

そもそも、過去には広島県芦田川水系でも見られていたみたいなので、広島県岡山県京都府ときたら兵庫県にも生息しているのでは?と考えてしまいますね。

なんで兵庫県に居ないんでしょうか?元々は加古川水系武庫川水系にも居たけど発見される前に絶滅したんですかね??

少し話が長くなりますが…

東南アジア・東アジア(熱帯や温帯のモンスーン)地域では雨季、日本では梅雨というものがあり、雨で川が氾濫した「氾濫原」を主にアユモドキやアユモドキに近いBotia属は生息場所にしていて、アユモドキが産卵場所に選ぶのも氾濫原なのです。特に亀岡市桂川水系では水田地帯が広がり、梅雨が始まる前には田に水を張るためゴム引布製起伏堰(以下、ラバーダム)で川の水を止めます。そのため、川の水位が上がり氾濫原が生まれます。そしてアユモドキは氾濫原に産卵し、稚魚も氾濫原で成長します。

www.city.kameoka.kyoto.jp

熱帯モンスーンでは亀岡市のようにラバーダムが無くても雨量があるので氾濫原ができるので関係ありませんが、亀岡市でのアユモドキの生活史を見ると、田んぼに水を引く=(ラバーダムで水位調節するという)人為的な活動ときわめて密接な関係になっています。

つまり、亀岡市で田んぼの利用がされなくなったらラバーダムを使うことが無くなるので、アユモドキは繁殖できずに個体数が減少していき、やがて絶滅します。

今、アユモドキが生息している地域は人為的に氾濫原ができる箇所だけで、兵庫県は河川の改修などで毎年のように氾濫原ができなくなったからなのでは?と個人的な考えです。

氾濫原は隠れ家にもなっていて魚の稚魚もいっぱいいるし生物採集は最高だよ。水田環境の生物多様性の話をしたら3000字は超えてしまうからやめておこう

 

前置きが長くなりましたので、本題へ。

みなさんはアユモドキを見たことがありますか?

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自然環境下のアユモドキ。水族館などの飼育下のアユモドキと見比べてほしい

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飼育下のアユモドキ(https://aqua.stardust31.com/koi/dojyou-ka/ayumodoki.shtmlより引用)

これがアユモドキです。本来ならアユモドキは天然記念物ですのでアユモドキを捕獲すると警察に捕獲(又の名を逮捕)されます。数年くらい前から、アユモドキの研究をされている京都大学のI先生とお会いする機会があったので調査の時に同行して撮影。

このアユモドキ、とても黄色が美しいですね。

I先生によると、飼育下のアユモドキ(水族館やアユモドキ生息地域付近の小学校で繁殖させている個体)はネズミ色みたいな汚い灰色をしている。天然の個体でしかこの黄色は出ないとのこと。

ちなみに、水族館で展示しているアユモドキの仲間(Botia属)で、原産地では縞模様が綺麗なグリーンをしている種も水槽内では灰色になっているらしい。餌で色が変わるのか、日光に当たらないと色が出ないのであろうか不思議である。

いや、よくよく考えたら、ウナギも色変わるような…

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ウナギ(黄色が天然物) http://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000022784.html から引用

川崎市 うなぎ(旬の魚・青果・花)

http://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000022784.html

 

飼育下と自然環境下で体色が変わる理由を調べるのも面白そうですね。

最後に忠告しておきますが、アユモドキは天然記念物なので捕獲も飼育も許可がないとできません。ペットショップでクラウンローチと呼ばれるアユモドキに似た顔をしている熱帯魚が売っていますのでそれで我慢してください。

 

もちろん、東南アジアの方に生息しているので、ヒーターが必要です 

テトラ (Tetra) セーフティデュオ 26℃ヒーター 20W

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 熱帯魚を飼育したことがないので、どのヒーターがいいか分かりません詳しい人に聞いてください。